勝ち方を知っていることの差か ~日本ダービー

今年のダービーは4強の争いと言われてきました。

まず2歳で大きく注目を集めたのがコディーノでした。札幌2歳Sに続いて東スポ杯を持ったままで抜け出して圧勝。その時点で、クラシックは決まったかとまで思わせるほどの勝ち方でした。
しかしそのコディーノに、朝日杯で待ったをかけたのがロゴタイプ。直線で先に抜け出したロゴタイプにコディーノが迫ってきたときは、あっさり交わすかと思われたものの、結局抜かせずにゴール。ロゴタイプのM.デムーロ騎手の差しだした手を、首を振って断ったコディーノの横山典騎手の姿が、そのショックの大きさを表していました。
片やラジオNIKKEI杯では評判の良血エピファネイアがあっさりと抜け出して3連勝。このときキズナは先行しながらエピファネイアに交わされ3着。やや差がある印象を残してしまいます。

年が明けて、ロゴタイプ以外の3頭は弥生賞で顔を合わせます。エピファネイア、コディーノ、キズナの順に1~3番人気に支持されますが、コディーノの3着が最高で3頭とも連対できず。ロゴタイプはスプリングSを勝ったものの、にわかにクラシック戦線は混戦模様のイメージとなりました。
そして弥生賞で5着にやぶれたキズナは皐月賞をあきらめ、毎日杯、京都新聞杯からダービーを目指す路線を選択します。
皐月賞はロゴタイプ、エピファネイア、コディーノの3頭が人気どおりに1~3着を占め、毎日杯、京都新聞杯を後方一気で連勝して、ようやく脚質が定まったキズナと、4強という体勢が整ったわけです。

この4頭は実力的には甲乙つけがたいと思いますが、鞍上の選択は大きく分かれました。
主戦の佐藤騎手が負傷して乗り変わってからは4戦連続武豊騎手が手綱をとるキズナと、デビュー以来弥生賞以外の4戦で福永騎手が手綱を取るエピファネイア。対してロゴタイプは皐月賞を勝ったM.デムーロ騎手が帰国してかわりに弟のC.デムーロ騎手に乗り代わりになり、コディーノは横山典騎手からウィリアムズ騎手に代わりました。

ダービーでは過去10年を振り返っても、騎手が乗り代わって勝った馬は1頭もいません。これは、レースで乗った経験がなければ、どれぐらいの脚を使うのかわからないということもあるでしょうが、やはり思い入れや信頼関係という面での違いが大きいのではないでしょうか。
もちろんC.デムーロ騎手もウィリアムズ騎手も、技術的にはすばらしいものを持っていますが、勝ちたいという気持ちで、どうしても数多く一緒に戦ってきた騎手には、少しだけ及ばない部分が出るのではないかと思います。

そして武豊騎手と福永騎手は、勝ちたいという気持ちの強さは、おそらく遜色ないと思いますが、違いはやはりダービーを勝った経験の有無ではないでしょうか。

武豊騎手も96年のダービーでは、ダンスインザダークでやっと勝ったと思った瞬間、フサイチコンコルドに差しきられて2着に破れて悔しい思いをしました。それが、98年のスペシャルウィークで、大きく抜け出しても最後まで追うことをやめなかった騎乗に現れていると思います。
さらに99年は、早めに抜け出した若手騎手2人の乗る人気のナリタトップロード、テイエムオペラオーを、後方からワンテンポ遅く追い出したアドマイヤベガで差しきるという、見事な騎乗で連覇を飾っています。

今年も、福永騎手は掛かり気味のエピファネイアをうまくなだめて中団を追走し、追い出すタイミングもすばらしかったと思いますが、最後にキズナが使う脚を熟知している武豊騎手に、ゴール寸前で鮮やかに差し切られてしまいました。

武豊騎手も全盛期に比べればかなり勝ち鞍も減っており、2年前はG1を勝てなかったり、衰えたかのような声も聞きますが、やはり勝ち方を知っており、落ち着いて対処できるのは、長年の経験の賜物だと思います。
ダービー5勝というのは、おそらく空前絶後の記録だと思いますが、まだまだ伸ばしていって欲しいと思うと同時に、やはりそれを上回るような騎手も、ぜひ現れて欲しいものだと思います。

キズナ
【キズナ】武豊騎手、5度目のダービー勝利でも、とてもうれしそうでした。
キズナ
【キズナ】先週の武幸騎手に続くクラシック兄弟制覇。今年の春のクラシックはデムーロ兄弟と武兄弟の手に。

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